動物と心電図

心電図とは

心電図(しんでんず、Electrocardiogram、ECG)は、心臓の電気活動を記録する非侵襲的な検査法の一つです。心臓は鼓動によって血液を体内に循環させる重要な臓器であり、その鼓動は心臓の筋肉による電気信号によって制御されています。心電図はこの電気信号をグラフとして表現し、心臓のリズムや動作を評価するための貴重な情報を提供します。

心電図の重要性

心電図は、心臓の健康や機能に関する重要な診断手段として広く用いられています。医療現場では、心電図による記録を通じて不整脈や心臓病、心筋梗塞などの心臓に関連する異常を検出し、適切な治療を行うことが可能となっています。

動物と心電図

心電図は人間だけでなく、動物にも利用されており、特に動物病院では犬や猫の診断手段として用いられています。動物の心電図測定によって、心拍のリズムや異常を早期に察知し、病気の早期発見や治療に役立てることができます。

動物の心電図と人間の心電図の違い

動物と人間を比較した場合、心臓の構造や大きさが異なるため、心電図の波形にも違いが見られます。
人間の心電図は通常12誘導心電図が用いられるのに対し、動物の心電図では一般的に3誘導心電図が使われることが多いです。

犬の心電図

犬の心電図の正常な波形パターンは種類や個体によって異なりますが、一般的には安定して規則的なリズムが見られます。心電図は犬の心臓の健康を評価するために重要なツールであり、不整脈や心臓疾患の早期発見に役立ちます。特に高齢の犬や心臓に問題を抱える犬に対しては、定期的な心電図検査が推奨されています。

動物の心電図の測定方法

動物の心電図の測定方法について、犬を例にあげて紹介します。犬の心電図測定は正確な結果を得るためにいくつかの注意点があります。

1)適切な状態での測定:犬が落ち着いてリラックスした状態で測定を行うことが重要です。犬が興奮していると正確な結果を得ることが難しくなります。

2)毛や皮膚の処理:犬の毛や皮膚が心電図の電極との接触を妨げないようにするため、必要に応じて毛をカットしたり、皮膚を清潔に保ったりする必要があります。

また、心電図測定は、次の手順にて行っていきます。

  1. 心電図の電極を取り付ける:適切な場所に心電図の電極を取り付けます。一般的には犬の胸や四肢の付け根(または肘や膝)に電極を配置します。

  2. 測定の開始:心電図の測定を開始します。測定中は犬が動かないように注意し、静かな環境で測定を行います。

  3. 測定の終了と解析:一定時間の心電図波形を記録した後、測定を終了し、得られたデータを解析します。

心電図でみる犬の健康状態

前述の通り、心電図によって犬の健康状態を把握することが可能です。

  1. 心拍数とリズム:正常な心電図は一定のリズムで安定した心拍数を示します。不整脈や心室細動などの異常によって心拍数やリズムが乱れる場合があります。

  2. P波、QRS波群、T波の形状:これらの波形の形状や大きさを評価し、異常がないかを確認します。異常な波形は心臓の問題を示す可能性があります。

  3. 心電図と症状の関連:犬が示す具体的な症状と心電図の異常との関連を考慮します。例えば、呼吸困難や動悸がある場合、それが心電図の異常と関連しているかを判断します。生体要因による不整脈は徐脈性・頻脈性に大別され、さらに不整脈の種類を特定していきます。
 

■心拍数
一分間に心臓が拍動する回数

70~160回/分 120~240回/分

■P波
心臓が興奮している時間帯(脱分極)

幅 :0.04秒以下
高さ:0.4mV

幅 :0.035~0.04秒以下
高さ:0.2mV

■PR 間隔
心房・心室間(房室間)を伝導する時間を表す
幅:0.06~0.13秒 幅:0.05~0.09秒
■QRS波
心室が興奮している時間帯(脱分極)
幅   :0.05~0.06秒
R波高さ :2.5~3.0mV

幅   :0.04秒
R波高さ :0.9mV

 

■T波
心室の興奮が冷める時間帯(再分極)
二相性(陽性、陰性) 二相性(陽性、陰性)



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