麻酔中における加温・加湿の有用性及び方法
麻酔中における加温・加湿の有用性及び方法
通常の呼吸している吸気では、上気道で加温・加湿がされているので、気管・気管支の上皮細胞の損傷・線毛運動の障害を防ぎ、痰や異物を吐きだす助けがされています。麻酔中に使用されるガスは低温で乾燥しているので、痰や異物の排出が困難になり、粘っている痰が気管チューブの内壁を閉塞する恐れが発生してしまいます。
また、低温のガスを使用する事により、体温の低下も懸念されます。この状態を防ぐ対策として、麻酔中のガスについての加温・加湿は人工鼻の使用が主流です。又は、ヒーター付き回路でも対応できます。体温低下の加温については加温装置(温風式マット・温水式マット)の使用で対応がおこなえます。
人工鼻の使用
人工鼻は動物の鼻とほぼ同様の機能を果たします。人工鼻は患者の呼気に含まれる熱と水分がエレメント素材を介し、患者の吸気に適度な加温・加湿を与えるものです。
人工鼻を使用する際は、患者が人工鼻の禁忌でないかどうかを確認し、患者の体重・1回換気量にあった人工鼻のサイズを選択します。
取り付けは麻酔回路と気管チューブの間に装着して使用します。ただ、人工鼻を使用する際は下記の事に気を付けてご使用ください。
・気道分泌物が多い時(人工鼻の目詰まりが発生)
・気道出血がある時(人工鼻の目詰まりが発生)
・体温が低い時(十分な加温・加湿ができない)
・低換気状態である時(死膣や呼吸抵抗の増加による換気の妨げが発生)
・ネブライザー使用時(フィルターが薬液を吸着し、目詰まりが発生)
・ヒーター付き回路使用時(併用しない)
また、下記の状態になった場合は人工鼻の交換をご検討ください。
・気道分泌物などによって目詰まりを起こしている時
・人工鼻が原因と考えられる呼吸困難を自覚した時
・人工鼻に汚染がみられた時
ヒーター付回路の使用
ヒーター付き回路は加温加湿器の事で、チャンバーと呼ばれる容器に精製水を入れて温めることで、送気するガスに水分を含ませる事ができます。送気するガスは相対湿度100%に加湿して使用するので人工鼻よりも加温加湿性能は高いです。取り付けは麻酔回路の吸気側に接続して使用します。
ただ、ヒーター付き回路は、回路が複雑な事と、電源が必要となり気道熱傷などのリスクがある事、常に精製水を使用する必要がる事などから、動物での使用はあまり主流ではありません。
加温装置(温風式マット・温水式マット)
手術中の体温低下を防ぎ、適温の体温に維持が可能です。主に温風式と温水式の2種類がありますが、どちらを選択して頂いても同等の効果が得られます。
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