血中酸素飽和度(SpO2 )と動脈血酸素分圧(PaO2)の関係

血中酸素飽和度(SpO2 )と動脈血酸素分圧(PaO2)の関係

血中酸素飽和度(SpO2)とは?動脈血酸素分圧とは?で説明させて頂きましたが、血中酸素飽和度は血液中のヘモグロビンに何%の酸素が結合しているかを示す数値です。この数値はパルスオキシメーターで測定した経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)で確認できます。また、この数値は動脈血から直接測定した動脈血酸素飽和度(SaO2)と強く相関しており、SpO2とSaO2の値はほぼ同じになります。動脈血酸素分圧(PaO2)は、赤血球中のヘモグロビン分子に酸素を結合させる駆動力として機能しています。この酸素とヘモグロビンとの結合率を示したものが酸素解離曲線です。

酸素解離曲線

酸素解離曲線は、縦軸にヘモグロビンと結合している動脈血酸素飽和度(SaO2)を、横軸に動脈血酸素分圧(PaO2)をとると、S字状(シグモイド曲線)となります。正常時の動脈血酸素分圧(PaO2)は100mmHgの時に、動脈血酸素飽和度(SaO2)は98%であり、曲線は水平に近く酸素分圧が少し低下しても酸素飽和度は維持されている為、抹消組織までの酸素運搬機能は高い状態です。しかしながら、低酸素血症時の動脈血酸素分圧(PaO2)が60mmHgの場合は、動脈血酸素飽和度(SaO2)は89%となり、それ以降は酸素分圧が少し下がるだけでも曲線は急勾配となっているので酸素飽和度は一気に下がります。この曲線の特性は、ヘモグロビンは酸素分圧が高い場所では酸素としっかり結合し、酸素分圧が低い抹消組織では酸素を放出しやすいことを意味しています。

動脈血酸素飽和度(SaO2)と動脈血酸素分圧(PaO2)の関係性の注意点

酸素解離曲線によって、動脈血酸素飽和度(SaO2)と動脈血酸素分圧(PaO2)のそれぞれの値を知る事ができると説明しましたが、2つの例外が存在します。

1つ目は、酸素はヘモグロビンと結合しますが、酸素よりもヘモグロビンと結合しやすいものがあるという事です。代表的なものとして一酸化炭素があります。血液中に一酸化炭素があると、酸素の200倍の強さでヘモグロビンと結合します。一酸化炭素と結合したヘモグロビンは酸素と結合できなくなりますので、組織への酸素供給ができなくなってしまします。血液内に酸素がたくさんあって酸素分圧が高い状態であっても、一酸化炭素と結合したヘモグロビンは酸素の割合が低下している為、動脈血酸素飽和度(SaO2)が低くなります。

2つ目は、生体の変化で酸素解離曲線が変化するという事です。その要因として、アシドーシス(血液が酸性に傾いた状態)やアルカローシス(血液がアルカリ性に傾いた状態)などのpH、二酸化炭素、体温などがあります。生体がアシドーシスになるとヘモグロビンが酸素を離しやすくなり、酸素解離曲線が右側へ移動します。これを「右方偏位」と呼び、組織への酸素供給が増える事を意味します。逆にアルカローシスになると、ヘモグロビンが酸素を離さなくなり、酸素解離曲線が左側へ移動します。これを「左方偏位」と呼び、組織に酸素供給がしにくくなります。これらの変化を「ボーア効果」と呼びます。これだけならば、アシドーシスの方が生体に良い様に思われますが、酸素を離しやすいという事は言い換えると酸素と結合しにくいという事なので、長期的にみると生体には不利益な状態になってしまいます。

以上2つの例外もあり、動脈血酸素飽和度(SaO2)と動脈血酸素分圧(PaO2)の関係性が崩れる状態もあるので、動脈血酸素分圧(PaO2)だけで酸素の状態を判断しないように気を付ける必要があります。

図1

【参考文献】
   伊丹貴晴(2018) 『犬と猫の麻酔モニタリング , 山下和人』 緑書房
   九州労災病院 後小路 隆 『数値・データの見方の味方』 AU361連載後小路氏本文.indd (nissoken.com)
   株式会社クイック 『看護roo!』 https://www.kango-roo.com/



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血中酸素飽和度(SaO2 )と動脈血酸素分圧(PaO2)の関係について、ご理解頂けましたでしょうか。
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