動物用人工呼吸器・麻酔器における用手換気とは?
動物用人工呼吸器・麻酔器における用手換気とは
動物用医療機器.comでは、動物用人工呼吸器のパイオニアメーカーとして活動してきた知見・ノウハウを生かし、動物用人工呼吸器に関する基礎知識をご紹介しています。当ページでは、用手換気についてご説明します。
用手換気とは
用手換気とは、バッグバルブマスクや麻酔バックを用いて、人手にて換気補助を行うことを言います。動物用人工呼吸器を使用できない環境下や緊急時に行われる他、外科手術において一時的に人工呼吸器を外す際に、用手換気は行われます。
用手換気に使用する器具
用手換気に使用する器具として、バッグバルブマスクと麻酔バッグがあります。この二つについてご説明致します。
バックバルブマスクとは
バックバルブマスクとは、酸素ガス供給源を用いず、患者に酸素を送気するための人工呼吸器具です。「アンビューバッグ」や「蘇生バッグ」とも呼ばれます。バッグバルブマスクは主に、①患者の鼻や口に充てるマスク ②弁として機能するバルブ ③手で押して酸素を送気するバッグ の3部品で構成されます。人用にバッグバルブマスクを用いて用手換気を行う際、ほとんどの場合はマスクを用いますが、動物用の用手換気の場合は、マスクを用いず、患者に接続することが多くあります。
酸素ガスを用いてバッグバルブマスクを使用し、用手換気を行うことも可能です。その際には、リザーバーバッグと呼ばれる酸素を充填する袋を用います。リザーバーバッグを接続せずに用手換気を行うことも可能ですが、酸素濃度が低下する傾向にあるため、リザーバーバッグを用いることを推奨します。
バッグバルブマスクは大きく3部品からなる単純な構造ですが、組立間違いが発生し医療事故に繋がることが懸念されたため、昨今は組立不要なバックバルブマスクが使用されることも多くなっています。
バックバルブマスクを使用した用手換気は、緊急時に行われることが一般的です。動物用外科手術中に、一時的に人工呼吸器を外し動物の麻酔状態を維持する場合や、人工呼吸器を用いず外科手術を行う場合は、麻酔バッグよる用手換気が行われます。
麻酔バックとは
麻酔バッグとは、麻酔器・気化器で生成された麻酔ガスを貯留するバッグです。麻酔バッグを人手にておすことで、患者に麻酔ガスが送気されます。麻酔バッグを用いた用手換気は、前述の通り、人工呼吸器を用いた外科手術中に一時的に人工呼吸器を外す場合や、人工呼吸器を用いずに麻酔器だけで外科手術を行う場合に行われます。
麻酔バッグのサイズ(麻酔ガス貯蔵容量)は、0.5ℓ~5ℓ程度がメインであり、動物の体重をもとに最適な麻酔バッグを用いる必要があります。最適な麻酔バッグを選定しないと、動物の肺の損傷リスクが高まることや、麻酔が十分に利かないなどのトラブルに繋がる可能性がありますので、十分に注意してください。麻酔バッグの選定は、下記を参考にしてください。
動物の体重 | 麻酔バッグ容量 |
0~10kg | 1L |
10~20kg | 2L |
20~30kg | 3L |
麻酔バッグの材質
麻酔バッグの材質として、ゴム製、シリコン製が主に用いられています。他、ディスポーザブルでプラスチック製の麻酔バッグも存在します。
①ゴム製の麻酔バッグ
安価であり一般的に使用されていますが、劣化が早くこまめな点検が必要です。患者がゴムアレルギーの場合もあり、その場合はシリコン製の麻酔バッグが推奨されます。
②シリコン製麻酔バッグ
ゴム製麻酔バッグと比較すると高価ですが丈夫で、減菌が必要な場合でもオートクレーブが可能です。膨らみにくく固いので、肺の状態が把握しにくいというデメリットもあります。
麻酔バッグを用いた用手換気
麻酔バッグを用いた用手換気について注意事項についてご説明します。
①切替弁の切り替え
動物用人工呼吸器を用いた外科手術の場合、麻酔バッグによる用手換気を行う際は切替弁にて手動操作に切り替える必要があります。基本的なことではありますが、手術時のトラブル等による焦りが生じると、切替弁の操作忘れが発生することがありますので、あらためて注意してください。
②麻酔バッグのリーク確認
用手換気を行う可能性がある場合、麻酔バッグのリーク確認を事前に行うことが重要です。麻酔バッグのリーク確認は聴音確認で行う以外に下記の方法があります。
①麻酔回路の先端を塞ぎ、非再呼吸ブラケットのポップオフバルブを閉じる。
②酸素を5L/minに設定し、気道内圧計が30cmH2Oになるまでガスを流す。
③30cmH2Oに達したらガスを止め、そのままの状態で30秒放置して気道内圧計の低下が5cmH2O以内であることを確認する。
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動物用人工呼吸器・麻酔器における用手換気についてご理解頂けましたでしょうか。
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